その隕石は黒々とし肌はつるりとしていた。大気圏に突入したときに表面が溶けたのだとしたら、そんなものかと思った。
縦は70センチ、横60センチ、高さ40センチといったところか。
足を踏ん張り力を入れ動かそうとしてみたがビクともしない。
マンションの床を貫き都心の地下に根を張っているようだった。
数百万年だたか数千年前だったか仔細は忘れたが、星が爆発、その欠片がアメリカに落ちてきた。それを船で運んできたそうだ。
先輩のチャネラーにはこの隕石はよく喋るらしい。故郷の星のことなど懐かしく話すのだという。
当時僕はこの隕石のある部屋を時々、主の留守に自由に使わせてもらっていた。
その日の昼下がり、遊び心で隕石に額をつけてみようと考えた。石の冷たさがとても心地よい。目を瞑った。隕石は僕にも何か話しかけてくれないだろうか。僅かな期待を込めながら。
その時だった。地震だ。思わず額をあげ部屋を見渡した。地震は治まっていた。先ほどの揺れはかなり大きかったのに不思議に思った。
再び隕石に額をつけた。やっぱり揺れている。慌てて立ち上がり窓から外をみる。街を行き交う人は慌てている様子もなかった。
テレビをつけてみた。見慣れた芸人が何か喋って共演者を笑わせていた。NHKに切り替え、速報のテロップが出るのを待ってみた。かなり大きな地震である。今か今かと待ってみたがテロップはついに流れなかった。
隕石は相変わらずどしりと部屋の真ん中に鎮座していた。誘われるように傍らに座り、改めて隕石に額をつけた。
グラグラと部屋全体が大きく揺れている。額を離すと収まる。つけると不思議とまた揺れているのだった。隕石の上部の凹みを指で確かめながらしばらくボーッとするしかなかった。
隕石は主の元を離れ人手に渡ってしまったと風の噂で聞いた。隕石の主ともいつの間にか疎遠になってしまった
(2022.8.12)